小佐田総合事務所 マンスリー・ヒューマン・マネジメント・レポート2(抜粋)
帰属意識の低下と情報過多が何でもないことを「大事件」にする!
【1】きっかけは「昼休み」の電話当番?
1》"鈴木さん"から電話です!中堅製造業であるG社で、その"事件"は起こりました。
昼休みに電話当番として事務所に残った従業員Cさんが、製造部長の机の上に、鈴木さんから電話がありました。 ○○〜○○番に電話してください というメモが置いてあったのです。部長が席に戻った時、Cさんはすでに食事休憩に出ていました。
ところが『鈴木さんて、どの鈴木さんかなあ』などと思いながら、あまり深く考えずに部長が電話した先は、先物取引の勧誘業者だったと言います。
2》烈火のごとく怒った部長
不適切な電話取次ぎに怒った部長は、食事休憩から戻ったCさんを呼び出しました。そして"指導"を始めようとしたところ、Cさんは言い訳を始めてしまったのです。
つまり『普通、勧誘業者は、電話をかけ直してくれとは言いません。この鈴木さんは親しげに話をし、自分の電話番号を告げたので、すっかり部長のお知り合いだと思いました』と反論したわけです。勧誘業者の巧みな"新手"です。
しかし、その言い訳態度が部長の逆鱗に触れ、部長は激怒し、Cさんを皆の前で怒鳴ってしまったのです。
3》当社拒否だけでは済まなかった?
父親にも叱られたことがないというCさんは、怒鳴られたショックで翌日会社を休みました。部長が『しようがない奴だ』とつぶやきながら、Cさんの自宅に電話しようとした時、部長の内線電話が鳴ったのです。
内線電話の主は社長でした。しかも『すぐに社長室に来い』というのです。まさかCさんを怒鳴ったくらいで、社長室に呼びつけられるのでしょうか。それともCさんは社長の親戚だったのでしょうか。
不安を抱えながら社長室に出向いた部長に、意外な展開が待っていました。
【2】労働基準監督署へ「告発」警告メール?
1》労働基準法違反?昨夜のうちに、Cさんから社長宛にメールが入っていました。
それによると、一斉休憩を与えず、自分に昼休み電話番をさせているのは、労働基準法違反だというのです。
メールには、関連ホームページのリンクがあり、そこには、 ◆旅客・貨物の運送など8業種以外は一斉休憩をとらせるべきこと ◆その例外は、労使協定を締結するか平成10年の法改正以前に労働基準監督署の許可を得ているかに限られる趣旨の説明がなされていました。
製造業であるG社は、上記8業種には含まれていません。
2》問題は別のところにある?
社長は部長を振り返り、『何があったんだい?』と聞き始めました。Cさんは労働基準監督署に通告すると言っているようなのです。
青くなって説明を始めた部長の話が終わらないうちに、社長が、少し笑いながらうちは顧問の社会保険労務士の指導で、労使協定を結んでいるから、昼休みに一斉休憩を与えなくてもいいんだよ。Cさんは、それを知らなかったようだ。しかし、部長、これで青くなっているようでは、君も知らなかったようだね。しかも問題はそれだけではなさそうだ…と冷やかに口を挟んだそうです。
部長はただ、目を見はるばかりでした。
3》何が問題だったのか?
しかし、社長が指摘する部長の問題とは何なのでしょうか。
社長は結論を急がず、最近の人材の特徴から、話を始めました。それは単なる"しつけ"や"現代人気質"に留まるものではなく、大切な要素を含んでいますので、ご一緒に整理してみたいと思います。
【3】帰属意識の低下と情報過多が人材を変えた?
1》社長の話@:組織への帰属意識の低下日本全体で、企業がリストラを進める一方で、転職を支援する企業が増え、一般的傾向として、人材の企業への帰属意識は極端に低下して来ていると考えなければなりません。
人材は、以前のように"わが社"意識で働くのではなく、条件がよいから、あるいは他に行くべきところが見つからないから"ここで働く"という気持ちの方が強いのです。もちろん、だからと言って従業員に"こびる"必要はありませんが、ここで働きたいという思いを持たせるよう、モチベーションを高めないままで厳しく接するのは逆効果になることが多いことを、まず認識しなければなりません。
2》社長の話A:"しかえし"を容易にする情報過多環境
しかも現代は、弁護士事務所が電車の車内広告で"苦しいなら自己破産という方法があります!"と勧める?時代です。インターネットには、様々な"解釈"が可能になる情報が、想像以上に豊富に蓄積されているのです。
おそらくCさんは、部長に怒鳴られたショックを引きずったまま、自宅でインターネットを見ていて"一斉休憩"の話題を知ったのでしょう。ネット上には、人体のどの部分を刺せば人が死ぬかなどの情報さえ存在するのですから、経営陣を追い詰めるネタの入手は、決して難しくないのです。
3》社長の話B:管理者の意識は変わっているか?
ところが管理者は、良い意味で組織への帰属意識を失っていませんし、G社の部長のように、インターネットに疎いケースも少ないとは言えないのです。
そのため一般の従業員と様々な"温度差"が生じ、それが、今回のようなささいな事件を、"大事件"にしてしまう原因になっているという訳です。
社長自身の電話でCさんは出社し、その後何事もなかったかのように働いているのですが、このG社の"事件"は、小さからず"教訓"を残したと言えそうです。
【4】「G社事件」の教訓
1》教訓@:企業は他人の集まりだから…かつての日本型経営観では、"企業は家族"でしたが、現代ではそうした関係は失われたと考えるべきなのでしょう。そして、企業は他人の集まりなのですから、最低限のルールを整備することが不可欠なのです。
G社の例では、労使協定が結ばれていたため、従業員が納得せざるを得ませんでしたが、協定がなかったら問題は深刻化していたでしょう。
一斉休憩ばかりでなく、時間外労働や解雇、あるいは転勤や退職にかかわる取り決めは、慣習ではなく明確な文書にして労使協定化することが大切です。
2》教訓A:外敵が増えたから…
勧誘業者に限らず、ユーザーや取引先も、厳しい環境の中で、自らを守る施策に必死です。今回の"鈴木さん"のように、小さなスキをついて、様々な人や機関が、企業内に切り込むチャンスをうかがっていると考えるべきかも知れません。
そんな中では、騙された担当者や、脅かされた人材を責めるのではなく、協同して組織や組織の人材を互いに守り合うという考え方が必要なのです。
経験豊富な管理者が、まだまだ未熟な人材を社会的な害悪から守るという姿勢を持てば、社長が指摘する"温度差"も小さくなるはずです。
3》教訓B:自信を持てる環境を作る
実はG社の社長も、部長を呼びつける前に、顧問の社会保険労務士に電話をして、自社に法律上の落ち度がないことを確認していました。その自信が、冷静な行動を生んだのです。
今回の事件よりも大きな出来事に際しても、状況を確認して"自信"を持つこと、それが最も大切なのかも知れません。
私どもも、ご期待に添うよう、今後とも支援をさせていただく所存です。
以上