小佐田総合事務所 マンスリー・ヒューマン・マネジメント・レポート(抜粋)
"人材指導"の成果を狙うなら日常の行動パターンを"小さく"変えること!
【1】自動車事故激減に成功した背景は…
1》 教育で交通事故はなくせない?トラック運転手の安全運転指導を得意とするE社の名物社長は、こんなことを言っています。
それは事故の悲惨さを見せても安全への注意を促しても事故がなくなるケースは少ないというものです。意識に問いかけて、いくら注意を促しても、人がそれで"危険運転者"から"安全運転者"に変わることはないというわけです。
しかし、意外な方法で事故を少なくすることができると言います。それは…。
2》 自動車事故激減の実績!
それは、自分が運転する自動車の"扱い方"を徹底して指導することだそうです。
例えば、 ・自動車を駐車場のラインや建物にきちんと平行に停める ・自動車ボディーの洗浄を怠らない ・運転席を絶えず清掃させる などというものです。
一見お寺の修行のようですが、驚くことに、場合によっては月10件の事故をコンスタントに起こす運送会社に、事故ゼロの月が生まれるほどの効果があるそうです。
『いつもうまく行くわけではないけれど…』と言いながらも、E社の社長はその秘密を、こう説明してくれました。
3》 キーは「行動パターン」にある
安全運転指導を得意とする、E社長が話してくれたのは、次のような内容でした。
『始めは私も半信半疑でしたが、よく事故を起こす運転者と事故のない運転者を比較すると、車の停め方とか清掃度合いとか、そんなものが歴然と違うのです。
だからまず、優良運転者の行動パターンを真似ようという呼びかけのつもりで、始めたのです。
それが、当初の想像以上の成果を生んで…』 その"想像以上の成果"は偶然なのでしょうか。
【2】「考える」仕事でも行動パターンが問題?
1》 机周りの整頓ができないと仕事ができない?一方企業の新規事業開拓や新商品開発を本業とするF社の社長は、『一部の天才は違うのだろうが…』と断りながら、自分の机の周りを整頓できない人材は、創造的な企画ができないと指摘します。
一般の印象では、創造的な人材は机の周りが雑然としているイメージがあると反論すると、『それはかつてどこかの天才がそうだったのを、テレビや演劇で誇張して印象づけているためだろう』と言うのです。
でも、なぜ机周りが整頓できないと、企画ができないのでしょうか。
2》 机の周りと頭の中は「同じ」
F社の社長は、経験上、机の整頓ができない人は頭の中も整理できていないことを指摘します。
『頭の中できちんと情報を整理する習慣を持っているから、込み入った企画や難しい計画に取り組めるのは分かるでしょう』と言いながら、社長は机の周りやファイリングの仕方を厳しく指導することなしに企画屋を育成することは不可能だとも言い切るのです。
社長自身、企画に行き詰まった時は、自宅の模様替えや大掃除をすると言います。昔の武道の修行が、整理整頓や清掃から入った理由が、うなずけるそうです。
3》 なんとなく分かる…?
自分のトラックの停め方への配慮やこまめな洗車が事故をなくし、机の整理や自宅の模様替えまでもが頭の整理につながって、新しい企画を生み出すなどと言われると、確かににわかには信じがたいところが残ります。
しかし、私たちの日常実感を探ってみれば、うなずける面も確かに少なくはありません。まさに人材教育現場では、知識を植えつけるより、行動パターンを変える方が効果的であるケースが多いからです。
【3】行動パターンを変えるとなぜ効果が出るのか?
1》 人の意識と無意識?心理学者のほとんどが、 人の行動は意識よりも無意識に支配される部分が多い と言います。頭(意識)では分かっていても、心から納得して(無意識で)受け入れないと、何事も実現できないのは、当然だというわけです。
しかも、その無意識と意識の架け橋には、身体(行動)が非常に重要な意味を持つとも言われるのです。専門的な話になる前に、E社やF社の例に戻ってみましょう。
2》 身体的行動が人の「無意識」部分を変える?
F社の社長は、企画に行き詰まると自宅の模様替えをすると言っていました。これは、心理学的に言うと、今までの部屋を新しく変えるという身体的行動を通じて、意識的には破れなかった発想の壁を、無意識の世界で破ってしまおうという働きかけだったのかも知れません。
同じように運転者も、駐車方法や洗車など、自車への接し方を、身体的行動を通じて変えることで無意識に行っている乱暴な運転習慣を変えるきっかけをつかんだのでしょう。
知識だけに訴える教育を繰り返しても、なかなか効果を生み出さないのは、身体的な行動に影響を受ける心の問題を無視するからかも知れません。
もしそうなら、昔からあった"修行"や"見習い"は、大変効果的な教育プログラムであったと言えるでしょう。必ず"身体動作"を伴うからです。
3》 理屈は高度でもすることは日常的
こうして言葉で解説しようとすると、どうしてもややこしい言い回しになってしまうのですが、人の無意識の部分に対し、小さな行動を通じて働きかけることは、決してややこしくも難しくもありません。
そこで最後に、行動パターンに訴えて成果を出した教育研修の例をご報告いたします。今後人材教育のあり方を検討される際のヒントにしていただければ幸いです。
【4】行動パターンを変えて成功した3事例
1》 顧客の「呼び方」でサービスの質が向上した顧客から"従業員の態度が悪い"と指摘されることが多かったK社では、"様付け"運動を展開しました。要するに、お客様の面前ではなくともお客様を"様付け"で呼ぶことに徹したわけです。
社内メモでも"○○様からお電話がありました"とし、部下への問いかけも"○○様の件どうなった"と聞きます。ファイルの背表紙の記載も"株式会社○○様"で統一しました。
新興宗教みたいで、はじめは気恥ずかしかった、と社長は言われますが、今では顧客のクレームは、ほとんどありません。しかも『以前より従業員のみんなが、お客様に関心を持っていてね。それが売り上げアップにつながっている気がする』と社長は言われます。
2》 会議の前の握手で会議がスムーズに…
会議になるとよそよそしい雰囲気で、議論が活発に行われなかったD社では、実験的に"会議前にメンバーが握手をし合う"ことに取り組みました。
『よそよそしい会話しかできないのは、スキンシップがないからだと思うのだけれど、変なスキンシップは気持ち悪いから…』というのが理由だそうです。『親しくなってしまえば、握手なんかしなくてもよいから、一時的な方法かも知れないな。これからは毎年、新人が来る4月だけにしようと思っている』とも、社長は言われています。
3》 報告書は全部文書化
P社は報告をすべて文書化することにしました。社内に"言った!言わない!"のトラブルが多かっただけではなく、深く考えない安易な報告が蔓延していたからだそうです。
『報告に時間がかかるようになったが、皆が考えるようになった。時間はかかっても確実な報告をすれば、今までのように誤解に振り回されなくなるから、効率は上がったと思う』と社長は言われます。
知識教育より行動パターンの変革…、御社でもまず簡単なことから取り組んでみませんか。
以上